14炭素循環農法 作物の収量の推移の紹介

炭素循環農法のデメリットで、
「畑が安定するまで2~3年かかる」
という点がありました。

安定するまでの2~3年は、具体的にどういう状態になるのか?
それについて紹介します!

目次

安定する、完成するとはどういう状態なのか?

化成肥料などや、鶏糞などの肥料を全く使わない畑を目指す炭素循環農法。
「よしやるぞ!」と思い、挑戦したとしても、
畑には前年までの肥料の残りが存在しています。
また、その影響で硬盤が出来ていたり、排水に難があったりします。
硬盤を壊し、肥料分や腐敗を無くすのに、時間がかかります。

この清浄化する部分に、
慣行栽培からで2~3年
自然農法などでも半年~1年かかるということです。


そして、そのステージを超え、畑の清浄度が上がって来るにつれ、
微生物の「量」(バイオマス)も増えてくる。
そこまで来たら、「安定」という状態になります。

作物や気候の状況にもよるのでしょうが、
微生物の喜ぶ環境を作り続ければ、
作物が深く深く根を張るようになり、
更なる品質向上も望めるそうです。
(林さんのホームページでは、ブラジルの圃場で
サトウキビが5m以上根を伸ばしている写真が掲載されています。圧巻・・・)

安定するまでは、どういう経緯をたどるのか?

まずはこちらの画像をご覧ください

施肥窒素は土壌中の残留量を示す。微生物由来の窒素は作物の生産量から推定した循環量を表し、土壌中には、その一部が一時的に存在するだけである。そのため土壌分析してみても数値には現れない。

単位期間・面積当たりの生産量は、施肥窒素が100以上の場合は100が限度。転換後は合計曲線に比例し、200~300%は容易である(作付け当たりの収量増、栽培適期の拡大、生育期間の短縮&収穫後直ちに植え付け=有閑期の減少=植え付け回数の増加)。

https://tan.tobiiro.jp/jissen/no3.html 林幸美さんのホームページより

まず、表を見間違えないようにしていただきたいのですが、
横軸の「〇〇ヶ月」は、
「1年と」〇〇ヶ月です。
1年目は画像左下「初年度(準備期間)0~12か月」の数行で済ませてあります。

解説の通りですが、炭素循環農法の目的は、
無機態窒素(グラフの青色)を減らし、
微生物由来の窒素(グラフ紫色)、
そしてその合計値(グラフ緑色)を増やすことです。

1年目は、残肥のおかげで何とか育つが、出荷は・・?

慣行栽培から炭素循環農法に切り替えた初年は、
まだ微生物が少ない状態です。

この時期には、大量には炭素資材(微生物の餌)を入れず、
少な目に投入します。
量が多すぎると、微生物がそれを食べきれず、腐ってしまうからです。


微生物の餌は少ないですが、前年までの肥料分が残っています。
なので、思いのほか収量(野菜のサイズ)は、減らないそうです。
私自身も、転換中(2年目)の畑があるのですが、
あるエリアはそこまで成長悪くないかも??と思う場所もあります。

ただし、「微生物が少ないのに、ちゃんと収量が上がっている」
という事は、肥料は残っている→まだまだ微生物には嫌な環境
を意味します。

「あらら、、何だか収量が減ってきたなぁ・・・」
という一見ネガティブな現象が起きてきたら、
畑の清浄化に向けて一歩進んだという事になるのです。

ちなみに、この時期に収穫した野菜のクオリティは、
前作までの状況(無機態窒素の残留具合)により、
味が一時的に悪くなる場合があるそうです。
「窒素吸収が抑制から積極的吸収に転じる」などの
言葉で林さんは表現されています。

作物などにもよりますが、
運よく虫食いが少なければ、
そして味に悪影響が出ていなければ出荷できますが、
虫食いがNGの出荷先がメインの売り先だった場合、
また、味が極端に悪い場合は
その畑としては売上が期待できないと思います。
辛いですが、乗り越えましょう!
(こういう点も含めて、初期はやはり
緑肥栽培が良いかと思われます)

2年目以降、畑はきれいになるけど収量が・・・

先程のグラフで言う所の、「1年と4ヵ月」あたりが、
『無機態窒素』も『微生物由来の窒素』の合計が一番少ない時期です。
(もちろん、畑の状況によって、この時期は前後します)

この時期になると、無機態窒素が減ってくることによって、
「虫食いがかなり減ってくる」という現象が起こります。
土壌の腐敗や、微生物が嫌がる要素を、植物がかなり吸収してくれた感じですね。

そのかわり、この時期には
窒素成分の総量が一番少ない時期になります。
つまり、作物の生育が著しく悪い状態になります。

ですので、虫食いが多かった1年目と比べると
「虫は来ないけど、作物も育たない」という、
炭素循環農法の原理が理解できていないと、
「?」な時期になります。
やはりこの年も、普段の出荷基準からしたら、
かなり小さい、出来が悪い作物になる事が予想されます。
1年目に引き続き、出荷量としては我慢が必要な時期ですね。

生育が悪い、は『餌を増やす』合図

1年目の最初は、「餌を大量に入れすぎない」とお話ししました。
餌を入れすぎると、微生物が処理しきれず、腐敗するからです。

先ほどの「作物がよく育たない」という時期は、
「無機態窒素が減ってきた」事を意味します。

林さんによると、
「作物が慣行農法の4分の3を下回る頃」が、
生育が悪い の合図だということです。

グラフで言うと、1年と1か月あたりですね。
栄養素の合計が最も少なくなるのは、グラフで見ると
1年と4ヵ月ごろ。

 収量が減ってきた
→炭素資材の量を増やす
→それでもまだ収量が減る
→収量が減る
→あ、何か収量が増えてきた
という流れを経れば、浄化がかなり進んだ事を意味します。

後は、
少しずつ畑の微生物が増える
→微生物由来の窒素が増える
→いい野菜が採れる
→増えた微生物にまた餌をやる
→更にいい野菜が採れる・・・
という流れになります。

不思議と起こる「まだら現象」

無施肥に転換して、一定期間
(寒冷地や大量施肥圃場で1ー2年)
(冬のない地域、施肥の少ない農法で1年未満程度)
が経過した頃、
同じ圃場内でも、生育不良(成長が遅い)や
病害虫の被害、極端に葉色が薄い・葉が硬い(養分不足)
など、「よくない状況」が
「まだら状」に発生する場合があるそうです。
ここのエリアは生育がいいのに、
すぐ近くのエリアは病気だらけ、みたいな事ですね。

しかし、林さんによると
このまだら状の発生も
回復現象、つまりいい兆候とのことです。

同一圃場でも、微妙に土壌条件に差があり、
土壌改良はまったく同じようには進まない、
いい条件のエリアは、生育が良くなるが、
悪い条件のエリアは、まだ虫食い、病害虫が続く
というイメージです。
言い換えると、悪いエリアは、
まだ施肥状態のまま(肥料が残っている)の
状態ということです。

浄化が進むまで、もう一息です!

完全に安定すると、餌すら不要になる

最終的には、収穫した野菜の残渣をすきこめば、
それが微生物の餌になり、翌年の野菜の窒素分もまかなえる・・・
というサイクルになるので、
「完全に安定したら、餌の投入も不要になる」
と提唱者の林さんはおっしゃっています。
が、この点に関しては2020年現在、私はまだ未体験のところなので、
果たして残渣だけで翌年の栄養素が大丈夫なのか確信はありません。
作物が葉物か根菜か、果菜類か・・などによっても違いはあるだろうしなぁ、
と、今は答え合わせができていません。

結論:例外を除き、我慢の時期が必要

炭素循環農法の「収量」にフォーカスしてみましたが、
やはり畑を清浄化する過程で、どうしても

無機態窒素を減らす

という期間が重要になってきます。
慣行農法からはもちろん
「自然農法」というカテゴリから転換される農家さんでも、
例えば鶏糞など、(自然由来だから大丈夫そうですが)
微生物にストレスを与えるものを使っていた場合、
その期間を抜け出すのに時間がかかるわけです。

例外がいくつかあります。
自然農法というカテゴリの中でも、
運よくこれまで微生物にストレスを与えるものを使っていなければ、
いきなりグラフ2年目以降に書いてある
「餌の大量投入」からスタートしても大丈夫だそうです。

それと、
10年以上耕作放棄地だった場所や、
新開地(新しく開墾した場所)は、
無機態窒素が無いので、
いきなり炭素資材を大量投入しても大丈夫だそうです。

ただ、耕作放棄地に関して、私の勝手な考えですが、
「全然手入れをしていない畑なのに、
 雑草が全然伸びていない」
畑は要注意かもしれません。
他の農家さんとの雑談の中で、
「耕作放棄地なのに、雑草が大きくならないということは、
 地面なのか、日照量なのか、要素は色々あるけど
 何か植物によくないポイントがあるんだよ」
という言葉を頂き、なるほどな、と思ったからです。

これから耕作放棄地を復活させる方は、
あえて「雑草がはびこっている」場所を狙ってみるのが
意外と近道かもしれません。
草刈りと、根を抜くのが大変ですがやってみる価値はあると思います。

余談:林さんの言葉

提唱者の林さんは、「炭素循環農法の作物」とは、
「微生物が喜ぶ環境が整った畑」で採れた作物の事を言い、
環境が整うまでは、「転換中」であるという意識を持て
という風な事をおっしゃっています。
野菜本来の味、というのは、
グラフでいう所の2年10か月とか、そこら辺まで行って、
土壌改良が80%以上行った畑でないと出せない、という事です。

慣行農法に比べれば、
2年7か月くらいから美味しくなるかもしれないが、
微生物や土壌がどういう状態か、しっかり見てやらないといけない。
怠っていると、すぐにまた逆行してしまう
という事だと思います。

デメリットで紹介した通り、
畑が安定するまで2~3年はかかる、というお話しでした。
最後までお読みいただきありがとうございました。

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